気持ち悪い台詞(わらプレvol.75)
(本日のあらすじ)
・自分が話していて気持ち良いリズムと、他人が聞いていて気持ち良いリズムは違う
・携帯のボイスメモ機能を使って、自分の「話し方」を聞いてみよう
・「かったるい話し方」と「せっかちな話し方」のそれぞれの対処法
3月4日のお笑いライブ「松下アキラのトークライブ(80%コント)」の稽古が大詰めを迎えております。
僕もかなり苦しんでおります。
人によって苦しむポイントは違うのでしょうが、僕の場合は「台詞」です。
元々、僕は台詞覚えが極端に悪いのです。
え、そんな訳ないでしょ?
頭良いんだから、台詞くらい簡単に覚えられるでしょ?
世間ではいまだに誤った認識が蔓延しております。
そのうちの一つが「桑山は頭が良い」という甚だしい勘違いです。
僕には取り立てて強烈なキャラクターがあるわけではないので、「頭が良いキャラ」「勉強好きキャラ」「読書大好きキャラ」「パソコン得意キャラ」など、言われるがままに受け止めてきました。
このメルマガでは、ポロポロと包み隠さずカミングアウトしていますが、これらのイメージは全て間違っています。
どうやら僕の顔立ちは「勉強が出来て(頭が良くて)」「パソコンが得意」そうに見えるようなのです。
そう!!
見た目だけで付けられたレッテルなのです。
でも、人間、不思議なもので「なんとか自分に貼られたレッテルに見合う人間になろう」と努力するものです。
(これは心理学用語でラベリング効果と言うのですが、その話はまた別の機会に)
自分が得意でもないのに凄く頑張って、スライドをパワーポイントで作ったりしていますが、正直言って、普通のサラリーマンが社内プレゼンで使うパワーポイントの方が、よっぽど凝っています(笑)
あ、もちろんガチのプレゼンになったら、喋りでは負けないつもりですが(笑)
ま、そんな訳で台詞覚えが悪くて手こずっているのですが、今回はそれにプラスして僕を苦しめているものがあります。
それは……
『喋るリズムと単語のチョイス』
自分が喋る時には絶対に言わない「単語」「言い回し」が沢山出てきます。
さらに、自分が喋るときには「そこでは切らない」と言うところで、「間を取ってくれ」「切ってくれ」という指示が来ます。
これが自分の中では気持ち悪くて仕方がないのです。
宇多田ヒカルの歌で、単語の途中で切れるような気持ち悪さ。
「な」「な回目のベ」「ルで受話器を取った君~」
「さ」「いごのキスはタバ」「コのflavorがした」
これって皆はあんまり違和感なく受け入れたのかな?
僕は(かなりの回数耳にしたのでだいぶ慣れましたが)いまだに若干の違和感・ある種の気持ち悪さを感じてしまいます。
でも、よくよく考えれば役者さんは「台詞のテンポ」や「間」などを演出家さんに毎回指示される訳で……いやぁ、つくづく凄いなと思います。
でも、この体験で幾つか思いついたことがあるのです。
今回はその中で「話のリズム」について考えてみたいと思います。
おそらく僕だけじゃなくて、大抵の人が自分の言葉のリズムを持っていると思います。
その中には「よく使いまわすフレーズ」「口癖」「ボキャブラリー」なども影響してくるでしょう。
やたら「超○○」を連発する人。
必ずといっていいほど「まぁ、何と言うかですね~」と冒頭につける人。
「~的な」「~みたいな」「~という感じで」と断定を避け、曖昧なニュアンスで話す人。
「まぁ、私としましては、アー、この件につきまして、エー、誠に、イー」と文節と文節の間を間延びさせる人。
逆にブツっブツっと区切るように話す人。
体言止めを連発する人。
自分が聞き手になった時のことを思い出してみて下さい。
なんか「アー」とか「オー」ばっかり耳に残っちゃって、話の内容が全然頭に入ってこないこと、ありませんでしたか?
とっても良い話なんだけど、やたら眠気を誘われる話だったこと、ありませんでしたか?
そうなんです。
自分が「喋っていて気持ちの良いリズム」と「他人が聞いていて気持ちの良いリズム」は違うのです。
もっと厳密に言うと「自分が聞いていて気持ちの良いリズム」と「他人が聞いていて気持ちの良いリズム」も違います。
しかし、まず第一歩としては「喋っていて気持ちの良いリズム」から卒業して「聞いていて気持ちの良いリズム」へと進化しましょう。
方法としては簡単です。
自分が人前で喋っている時(本番)や、人前で喋っている練習をしている時(リハーサル)の声を録音してみましょう。
今時はスマホでもボイスメモ機能がついていますし、ガラケーでも大概の機種には録音機能がついています。
正直、自分の声や喋りを聞くのは凄く恥ずかしいものです。
僕でもそうです。
本当に面倒臭く感じるし、聞きたくないなぁと思います。
でも、よ~~く考えてみて下さい。
自分が「恥ずかしいから」と聞くのを拒んでいるだけで、実際「その恥ずかしいリズム」で人前で話しているんですよ?
ここは良い意味で諦めましょう。
そして毎回でなくても、話を最初から最後まででなくても良いので、向き合いましょう。
(ちなみに、こういった理由から「小声でもいいから声を出して」とvol.57~61くらいの実況中継でお勧めしていたのです)
これをしてみると、自分のリズムがわかってくると思います。
ざっくり乱暴に分けると2つに分かれますよね。
「かったるい話し方」と「せっかちな話し方」
自分で聞いてみて「かったるい話し方だなぁ~」と感じた方は……
1.意識的に体言止めを使ってみて下さい
2.多少間が空いても、話すべき1文がまとまってから話し始めてください
3.ひとまとまりの話が終わった時は、一拍空けずにゆっくり無言で頷いてみて下さい
体言止めを使えば、語尾が延びることが防げます。
ただ、これも程度問題で、全ての語尾を体言止めにしてはいけません。
話すべき1文がまとまらない内に、見切り発車で話し始めると、途中で頓挫して「えー」「あー」とやるハメになります。
もっとも、頭を七三に分け(vol.35)、実況中継を応用(vol.61)して「つなぎの技術」「着地の技術」を使えるようになれば、見切り発車で話し出しても、なんとかなります。
「つなぎの技術」「着地の技術」については、また別の機会に。
実は無言で頷こうと思って話すと、語尾は延びません。
たっぷり間を取ってから、ゆっくり頷けば可能ですが、喋り終わりで間髪入れずに頷こうと思うと、逆に語尾を延ばす方が難しいのです。
この時、実際に頷いても、心の中で頷くに留めてもどちらでも構いません。
逆に自分で聞いてみて「せっかちな話し方だなぁ~」「早口過ぎるな」と感じた方は……
1.話の要所要所で「どうですか?」「そういう事ってありませんか?」等と話し掛け、聞き手の表情を確認して下さい
2.オノマトペ(擬音語・擬態語)を意識して取り入れてみて下さい
3.一つの話につき、例え話をもう1~2個増やしてみて下さい
聞き手の表情を観察することで、必然的に「間」が生まれます。
オノマトペを使うと話が柔らかくなります。
話のテンポは変わらなくても、受けるイメージはゆったりした感じになります。
例え話を増やすというのは「違った切り口で同じ話題を繰り返す」ということです。
つまり「せっかち」で「早口」なために、聞き手の理解が追いついていない状態を回避するわけです。
気付きの機会を増やすと共に、理解が追いつく時間を稼いであげるわけです。
聞き手の理解が追いつかないのに次の話を始めてしまうと、聞き手は途中までは頑張ってついていきますが、どこかで理解するのを諦めます。
バスの後ろを必死で走って追いかけて、最後は立ち止まり、哀しい背中で見送るあの姿です。
それだけは何としても避けなければいけません。
次回は、この台詞に苦しんだ体験から、初心に返って「緊張を回避する方法」について考えてみたいと思います。
自分で思う自分のリズム、あなたなら「どっちのタイプ」だと思いますか?