講師が使った「あるもの」とは……(わらプレvol.121)
こんにちは、桑山です。
今日は早速、本題です。
昨日の「(2)地震その他の災害対策は、なぜ皆が眠くならなかったか?」について、何人かから回答を頂きました。
講師の方が震災の現場にいらっしゃった方なのでは?
という予想を頂きました。
現場体験者の話はリアル感があるのではないかという予想でした。
う~~ん、惜しいっ!!
というか、ほとんど正解なのですが……
この講師の方は震災の現場にはいなかったのです。
震災の現場にいなかった人でも、「これ」を使うことによって話に臨場感が出て、聞いてる人の興味をひきつける事が出来ます。
逆に現場にいた人でも「これ」を使わなければ、臨場感が伴わず、伝わり方がとても薄くなります。
それは一体何かというと……
「ストーリー」です。
何故だかわかりませんが、人間の脳というのは「ストーリー」「物語」が大好きです。
箇条書きや、情報だけだと全然頭に入ってこないのに、物語だとすっと頭に入ってくるという経験はありませんか?
例えば、学校での歴史の授業では全然頭に入ってこなかったのに、大河ドラマを観ると周辺の武将の名前までガンガン覚えられた。
例えば、ヨーロッパの地理を習っても全然覚えられなかったのに、ヨーロッパが舞台の小説を読むと、地図を見た時、地名がピンと来る。
講師の方は地震の震災の話をする時に、これを使いました。
阪神大震災の時に、倒壊した建物による圧迫で即死したケースは意外に少なかったそうです。
一番多かったのは倒壊した建物や家具の下敷きになって、徐々に呼吸が苦しくなって亡くなるケースや、同じく下敷きになったまま、火災に巻き込まれて死亡するケースが多かったんだそうです。
だから家具は固定しましょうね。
そういう話だったのですが、これだけなら「ま、よく言われる話だよね」とスルーしてしまいます。
昼食後の講義だったので爆睡タイムに突入してもおかしくない時間帯。
でも講師は、阪神大震災の被災者の遺族が抱えるPTSDの話をしました。
倒壊した建物に足をはさまれたお父さん。
家族で必死にお父さんを引きずり出そうとするけど、瓦礫はビクともしない。
娘も母も必死の形相で瓦礫をどけようとします。
ふと気がつくと焦げ臭いにおいが。
見回すと隣の家まで火の手が迫っている。
泣き叫びながら必死に瓦礫に力を込める娘たち。
「俺のことはもういい。お前達はもう逃げなさい」
そういう父になおも泣きじゃくりながら、すがる娘達。
もう火の粉が頬を焦がすほどに迫っている。
意を決した母は、泣きじゃくる娘達を父から引き剥がし、逃げた。
「あの時の判断は正しかったのか、と今でも自分を責め続けている」
母はそう語ったそうだ。
それから、「家具固定の重要性と固定方法」を説明する。
当然、みんなはしっかり聞いている。
さらに震災からの教訓で、こういう法律のこういう条文が出来たという説明。
ここから入ると、普段は眠気を伴う法律の話も皆理解しながら、きちんと聞いている。
ストーリーの力を思い知った一場面でした。