ビーチで起こった素敵な話(わらプレvol.101)
(前回のあらすじ)
先輩の松下アキラさんは、飲み会で「台本(ネタ)
を書くのは凄い労力でしんどい」という意見が
出たときに異を唱えました。
「だって、何のプロなんですか?」と。
その一言は僕にとっては物凄く衝撃的な一言でした。
よく、頭をハンマーでガツンと殴られたような
衝撃、という使い古された表現がありますが、
まさにそんな感じでした。
何のプロ?
これはとても重要な考え方なのです。
その発言を聞いて、僕はひとつのエピソードを
思い出しました。
有名な話なので、もしかしたらご存知かも
しれませんが……。
リッツ・カールトンという一流ホテルの話です。
----------------------
『アメリカ・フロリダ州にあるリッツ・カール
トン・ネイプルズでの出来事です。ビーチ係が、
砂浜に並んだビーチチェアを片づけていました。
そこにひとりの男性のお客様がやってきて、こう
告げました。
「今夜、この浜辺で恋人にプロボーズしたいんだ。
できれば、ビーチチェアをひとつ残しておいて
くれないか」
時間が来たら椅子を片づけるのが彼の仕事でした
が、そのスタッフは「喜んで」と言ってにっこり
と笑い、ビーチチェアをひとつだけ残して
おきました。ここまでは、少し気のきいたホテル
マンならば誰でもできることです。
ところが、そのスタッフは違いました。
彼は椅子のほかにビーチテーブルもひとつ残して
おいたのです。そしてテーブルの上に真っ白な
テーブルクロスを敷き、お花とシャンパンを
飾りました。またプロポーズの際に男性の膝が
砂で汚れないように、椅子の前にタオルを畳んで
敷いたのです。
さらに彼はレストランの従業員に頼んで
タキシードを借り、Tシャツに短パンという
いつものユニフォームから手早く着替えました。
手には白いクロスをかけ、準備を整えてカップル
が来るのを待っていました。
お客様が言葉にされた要望は、ビーチチェアを
ひとつ残しておくことだけだったにもかかわらず、
です。』
(『リッツ・カールトンが大切にする サービスを
超える瞬間』より引用)
----------------------
(つづく)