裏切りの……(わらプレvol.195)
こんにちは、桑山です。
今日は小平公演です。
今、公演の本番真っ最中です(笑)
出番が少ないとはいえ、公演中にメルマガを書くこの緊張感、そして背徳感(笑)
たまりませんね。
さて、一昨日、観劇に行ってきました。
このメルマガでも募集した「観劇ツアー」の【演劇のろま集団】の『裏切りのシャッター通り』です。
レビューを昨日のメルマガで配信しようと思ったのですが、昨日はメルマガを核時間が取れないまま夜になってしまいました。
昨日は映画の完成試写会があり、関係者達が集まってスクリーンで観たのです。
この前までしきりに告知していた「愛と。酒場と、音楽と」ではありません。
今年の3月に撮影した長編映画「お口の濃い人」の完成試写会です。
来年あたり、どこかの映画館で公開されたらいいなぁ……。
その時はまたお知らせしますので、観に来て下さいね♪
さて、話を元に戻しましょう。
「裏切りのシャッター通り」
今回は3人で観に行ってきました。
物語の舞台は、寂れた町の商店街。
年々、商店街の売り上げは先細っていき、いわゆるシャッター商店街になりつつある。
しかし、そんな中でも市長は町の人を、そしてこの商店街を愛し、ともに寄り添うような行政を行っていた。
が、その市長のお葬式から物語は始まる。
安泰だと思っていた市長がふいにいなくなってしまったことによって、色々な歪みが出てくる。
当然、次期市長を狙う者も出てくる。
加えて商店街の衰退を改革しようと思うものも出てくる。
そんな不意に起きた、いや不意に気づかされたと言った方が正確なのかもしれない奔流に飲み込まれていく商店街の面々。
物語を見進めていくうちに僕はとても不安になった。
というのも、シャッター商店街の問題は現実世界でも、いたるところで起こっている問題である。
しかも、2~3の街おこし成功事例はあるものの、その大半は問題を解決できていない根深い問題だ。
はたして2時間弱のお芝居の中でそれらの解決策を示すことが出来るのか?
僕の不安感は増すばかりだった。
お芝居を観ているうちに、お芝居のストーリーの向こう側に色んなことが浮かんできた。
自分の心象風景とでも言うのだろうか。
色んなことが想い起こされる。
商店街を存続させようとする人と、街の活性化のために大型デパートを誘致しようとする者。
想いや理想はあるけれど、生活という現実も目の前には存在している。
時代の流れを受け入れる者、流れに抗う者、その狭間で揺れ動く者。
この理想と現実の葛藤に悩む姿を見ていたら、不意にある童話のワンシーンが頭の中に蘇ってきた。
池の周りでおじいさんがランプを吊るしていくシーン。
気になって後で調べたら、「ごんきつね」で有名な新美南吉さんの『おじいさんのランプ』という話でした。
https://www.aozora.gr.jp/cards/000121/files/635_14853.html
ランプを商売にしていたおじいさんが、村に電気が引かれると聞き、散々抗った末に「自分の商売は時代遅れだ」と悟り、ランプ屋を店仕舞いする話だ。
この手の話はなんとも言えない哀愁が付きまとう。
当初、「シャッター商店街なんて目新しくもない問題」だと思っていた僕はそこではたと気づかされる。
いや、これは今現在も進行している問題なのだ、と。
シャッター商店街の問題が、ではない。
【時代の流れ】という問題が、だ。
記憶に新しいところでは、2014年に発表されたオックスフォード大学の論文では、今後10年間(今からだと6年間)で、AI(人工知能)の発達と普及によって47%の仕事がなくなる、という。
スーパーのレジ係、タクシー運転手、ホテルの受付係、データ入力作業員、カジノのディーラー、給与・福利厚生担当者などなど。
ある日突然、自分が長年従事していた職業自体がなくなるとしたら?
その戸惑いを商店街に名を借りて表現しようとしているように感じた。
また、補助金のために自分の店をたたむ者も出てくる。
店を、商売を続けたいのは変わらない。
しかしこのまま続けていっても先細りの現実が待っているだけだ。
自分には家族もある。生活もある。
理想だけでは食っていけない、生きていけない。
その姿を見ていると、自分のサラリーマン時代を思い出した。
「今やっている仕事は、自分が思い描いていた憧れの仕事ですか?」
「今の仕事で幸せですか?」
こう聞かれて、一体どれくらいの人が満面の笑みで肯定できるのだろう?
そうは言っても仕方ないじゃないか。
現実はそんなに甘いもんじゃない。
理想じゃ飯は食えない。
現実問題として生活していかなくちゃしけないんだ。
生き方と生活。
字面は似ているがニュアンスは全く違う。
そんな想いも商店街にオーバーラップする。
果たして、商店街の運命はどうなるのか?
寂れ行くシャッター商店街を復活させる方法はあるのか?
それは観てのお楽しみ。
ただ、私の小説の師匠である高橋フミアキ先生が、以前、講座の中でこんな事を言っていた。
「良いビジネス書というのは、解決策を教えてくれるビジネス書。
ただ良い小説というのは問題の解決策を教えてくれる小説ではない。
良い小説というのは、読者に問題を考えさせてくれる小説である」
『裏切りのシャッター商店街』
10/28(日)まで、東京・中野のテアトルBONBONで上演中です。
興味の湧いた方は是非っ!!
https://stage.corich.jp/stage/92817