リレーのアンカーって、船のいかりの意味です(わらプレvol.78)
(今回のあらすじ)
・まずはリラックス出来る状況を探す
・その状況を五感で記憶する
・その状況で感じた気持ちと「動き」「キーワード」をリンクさせる
前回は「アンカリング」という手法をご紹介しました。
このアンカーは船のいかりの意味です。
つまり、「留めておきたい感情の場所に錨を下ろす」という意味なのです。
ちなみに綱引きの競技で一番最後の人は「錨役」ということでアンカーと呼びます。
そこからリレーでも「一番最後の人」をアンカーと呼ぶようになったのです。
以上、どうでもいい豆知識でした(笑)
今回はそのアンカリングの具体的な方法です。
と言っても、前回でほとんど書いてしまったので、今回はほとんど書くことがないんですけどね(笑)
アンカリングの具体的な作り方は……
(1)どこかリラックスできる場所、リラックスできる時間を見つける
これは別にリラックスでなくても、自分が望む状態であれば構いません。
例えば求めるものが「リラックス」ではなくて「集中」であれば、自分が集中している場所や時間、といった感じです。
今回は説明がわかりやすいように「リラックス」で統一しますが、読み替えは可能です。
(2)その状態を自覚する
「あぁ~、確かに今、リラックスしてるな」とその状態をしっかり自覚します。
場所はどこでも構いません。
お風呂で湯船に浸かっている時でも構いませんし、
布団の中でも構いません。
トイレの中でも良いでしょうし、
リビングで好きな音楽を聴きながらソファでくつろいでいる時でも構いません。
好きな本を読んでいる時、好きな映画やアニメを観ている時でもOKです。
極端な話、車の運転中でも良いのです。
僕の経験則上、自分の趣味や自分の好きなことをしている時が「リラックス」していて「集中」して「気力」も充実していることが多いようです。
それを心の片隅に気にかけておいて、まずは自分にとって「リラックスしている時はいつか」を見つけることから始めましょう。
(3)その時の状況を記憶する
ここがキモですので、丁寧に解説しますね。
自分が望むシチュエーションの時(リラックスしている時)に「どんなペースで呼吸しているのか」「どのくらいの速さで鼓動しているのか」「何が見えているのか」「どんな音が聞こえているのか」を記憶しましょう。
目くじら立てて覚える必要はありません。
なんとなく、で良いのです。
この時に一番記憶して欲しいことは「自分の気持ち」「雰囲気」です。
ただ、いきなり「自分の気持ちを記憶して」と言われても、これ、簡単なようで実は凄く難しいことなんです。
プロの役者さんって、いきなり笑ったり、泣いたり、怒ったり出来るじゃないですか?
あれって素人から見てると「感情を記憶していて、その場で自由自在に再現している」ように見えますよね。
もちろん、10人いれば10人の方法論があるので、10人いれば10通りの方法があるのでしょう。
なかには天才肌の人もいて、そういう人は台本を読んだだけで、その気持ちになって何回でも再現できるのかもしれません。
でも、全員がそんな天才肌ではないはずです。
では、どうやっているのでしょう?
台本を読んだら、自然とそういう気持ちになるのでしょうか?
でも、よく考えてみて下さい。「自分と違う」役を演じるのです。
その役の人にとっては物凄く悲しいことでも、自分にとってもその役と同じくらい物凄く悲しいとは限りませんよね?
もちろん台本を読み解き、理解を深めれば、演じる役の感情には近づけます。
しかし、どうやっても自分の感情が「役として求められる感情のレベルに達しない時」もあります。
そういう時には「感情を作らなければ」いけません。
あるいは「増幅」させなければなりません。
ある感情を思い出そうとした時に、感情そのものを思い出そうとすることはとても難しいことです。
現代演劇の基礎を築いたスタニスラフスキーという偉い演出家が提唱したシステムによると
「感情を思い出すのではなくて、感情を想起させる『事実』を思い出す方が効率的で確実」
なんだそうです。
単に「悲しさ」を思い出そうとしてもなかなか不安定だけど、飼ってた愛犬が死んでしまった時の「愛犬の顔」「その時の気温」「聞こえていた音」「愛犬の手触りや温度」などの『事実』を思い出す方が、その時の気持ちに自然になれるのだそうです。
で、そういう「演技論」を緊張を解きほぐす「アンカリング」に応用するのです。
まぁ、まわりくどく言いましたが、要は「その時の五感で得た情報を記憶した方が感情を思い出しやすい」ということです。
(4)その状況で「独自の動き」をして、自分で決めた「キーワード」をつぶやく
この状況で、今度は「動き」と「言葉」を「感情」に紐付けします。
動きは何でも構いませんが、普段はあまりしない動きの方がスイッチとして認識しやすいと思います。
左の耳たぶを引っ張るのでもいいし
胸をトントンと2回叩くのでもいい。
なんでもいいので、スイッチとなる動きを行いながら、リラックスしている今の状態を存分に感じ、「動き」と「気持ち」をセットにします。
どんな動きでもいいのですが、あまり複雑な動きや、ライダーの変身ポーズのような派手で目立つ動きは避けた方が無難です(笑)
本来はここまででいいのですが、僕はこれに「キーワードのつぶやき」をプラスすることをお勧めします。
「動き」をし、「声に出し」「声を聞くこと」で、より強固にスイッチとして認識できるからです。
ちなみに僕の場合は、両方の掌の真ん中のツボ(労宮)を押しながら「催眠状態」と呟いています。
あぁ~、こういうカミングアウトって本当に恥ずかしい……。
(5)これを繰り返して身体に覚えこませます
例えば毎回お風呂の中でこれをやる。つまり、本当にリラックスしている状態で身体にアンカリングの動作を覚えこませる(インプット)【気持ち → 状況記憶 → アンカリング動作】
そして、何でもないときにやってみる。(アウトプット)【アンカリング動作 → 状況思い出し → 気持ち】
最初は「いつもと大して変わらないけど、ちょっと気分が違うかな」くらいですが、何度もインプットとアウトプットを繰り返しているうちに、その連結は強く確実になってきます。
何度も繰り返しているうちに……
ルーティンの動き+キーワード → 気持ちを思い出すための事実(見たもの、聞こえたもの、触感、感じた身体の状態) → 気持ち・雰囲気
が、
ルーティンの動き+キーワード → 気持ち・雰囲気
にショートカット出来る様になります。
ちなみに、僕が何故キーワードに「催眠状態」という言葉を使っているかというと、実はチート技(ズル)を使ったからです。
いやぁ、何回もインプットとアウトプットを繰り返して徐々に強固なシステムを構築するのが面倒臭かったので、催眠術師に頼んで「催眠状態(トランス状態)」に入れてもらったのです。
そして、そのリラックスしつつ集中しているトランス状態の中で、動きとキーワードを紐付けして「アンカリング」を作ったからです。
キーワードを併用するのは、催眠術でいうところの「後催眠」の効果も併用するためなのです。
今日は長くなってきたので、後催眠や暗示については、また別の機会に説明しますね。
※トランス状態とは、ゲームに夢中になって時間を忘れたり、何かに集中していて「え? もうこんな時間?」みたいな状態です。
スポーツ選手などはこのトランス状態を「ゾーン」などと呼ぶ人もいるようです。
実はこの状態は、変性意識状態といって「瞑想」「催眠」「寝起き」の状態と脳波が似ていることがわかっています。